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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)581号 判決 1960年7月01日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山岸文雄、同河合信義の上告理由第一点について。

原判決が判示日時上告人に対し賃料増額の意思表示をしたことを認めることができる旨判示したのは、右日時上告人に意思表示が到達したものと認定した趣旨にほかならない。そして、いわゆる留守番は、留守中本人に対してなされる通知、意思表示等の受領をも目的としておかれるのが普通であるから、原審が論旨摘録のような証言、供述により前記認定をしても、何ら所論の如き違法はない。

同第二点について。

仮に、所論小切手が現金の支払に代えて交付されたものであつても、当事者の合意により右小切手及びこれと共に支払われた一部現金を返還した以上、所論債務は未だ履行のない状態に立ちかえつたものと解するのが相当である。何故ならば、弁済が事実行為であつても、これによつて生じた法律上の効果を当事者双方の合意により排除することは何ら妨げなく、しかも、弁済の目的物を合意の上弁済者に返還することは、特別の事情がないかぎり、弁済の効果を排除する合意を伴うものと推認し得るからである。

されば、前記小切手及び現金の返還により所論債務は未だ履行なき状態に立ちかえつたものと解し、所論契約解除の効力を認めた原審の判断は正当であつて、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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